埼玉県新年度予算案 シニア支援に重点配分 就職・医療体制を強化

 県は十二日、二〇一六年度当初予算案を発表した。団塊の世代が七十五歳以上となる「二〇二五年問題」に対応するため、シニア世代の就職支援や介護・医療体制の強化など「シニア革命」を重点施策に位置付け、約三十五億円を計上した。上田清司知事は記者会見で「今後、異次元の高齢化が始まる。アクティブシニア(元気な高齢者)の活躍こそが、生産年齢人口減少による日本の危機を救う一つのカギだ」と述べた。 (冨江直樹)
 「二〇二五年問題」への対応は、上田知事が昨年夏の知事選で公約に掲げた。県によると、県内の七十五歳以上の高齢者数増加は全国一の速さで進展し、一五年の七十七万人から二五年には百十八万人に増える見通し。一方、県人口は五年以内に減少に転じることが見込まれており、十五~六十四歳の生産年齢人口は一五年の四百五十一万人から二五年には四百二十四万人に減少する。こうした状況から県は、高齢者の就労促進や健康維持が必要だと判断した。
 就労面では、キャリアコンサルタントがシニア世代の再就職や、資格・技能取得の相談にのる「セカンドキャリアセンター」を県内八カ所に整備する方針。このうち、さいたま市ではハローワーク浦和・就業支援サテライトに先月設置したシニア専門の就職支援ブースをセカンドキャリアセンターに格上げする。
(東京新聞 埼玉県版 2月13日)

少子高齢化が進む中、高齢者の就労促進は、女性や外国人の活用と並んで、一億総活躍社会実現のための重要な柱だ。また、高齢者の健康維持を増進し、健康寿命を延ばすことは、働ける年齢を延ばすだけでなく、年間10万人といわれる介護離職・転職を抑制する効果も期待できる。

一方、埼玉県は、首都圏にあって人口も事業所も多く、財政的にも比較的恵まれた自治体ではあるが、高齢化のスピードが速い県でもある。国の施策に頼るだけでなく、自治体としても、ある程度の人口を維持している今のうちから、シニア世代の就労支援や介護・医療体制の強化に取り組むのは、賢明な施策といえる。

今後、同様の施策は他の自治体でも行われるようになるだろう。そうなれば、自治体がその境界を越えて相互に協力することにより、国全体として相乗効果を高めることができる。埼玉の高齢者が東京で働くことを支援したり、その逆も支援したりと、さまざまなケースがあってもよい。さらに、ネットを介して、世界中の仕事を受けることもできる。自治体の枠にとらわれない、高い視点と大きな視野での施策遂行を期待したい。