高齢者は「75歳以上」 長野県2市が引き上げ提言

今年9月、長野市と長野県松本市は高齢者の定義を「65歳以上」から「75歳以上」に引き上げようと提言した。社会保障制度の年齢要件などを変更するものではなく、当事者や企業の意識を変えることで、高齢者に社会で活躍してもらおうという内容だ。長野県の人口は今年4月1日で206万5168人。うち65歳以上は64万3045人で全体の31.4%を占めている。
(毎日新聞長野版 10月28日)

社会保障制度の年齢要件を変更しないのならば、地方自治体が高齢者の定義を75歳以上に引き上げることにどれほどの意味があるのか、とも思えるが、長野市や松本市の意図は、民間に対する意識改革を促すことにあるのだろう。社会保障制度は変えないが、民間企業の人事制度は変えて欲しいというメッセージのようだ。

その意味では、高齢者の定義の年齢引き上げには一定の効果はある。「65歳になると引退するものだ」という常識を変えることは、高齢者の雇用機会拡大にとって、重要な最初の一歩だ。ただ、最終的に変えるべきは、「引退の時期は、当人の健康状態や意欲によらず、年齢によって一律に決める」という常識だ。行政は、65歳か75歳かではなく、年齢にこだわらない雇用制度の推進にも努力すべきだ。