建設業の退職金、人材呼び込みへ引き上げ検討

人手不足が深刻な建設業の処遇改善に向け、厚生労働省は現場で働く人の退職金を増やす方針だ。事業者が出す掛け金を現在の日額320円から大幅に上げられるようにする。賃金面での魅力を高め、多様な人材を呼び込む。
建設現場で働く大工や左官、とびや配管工など幅広い労働者が対象となる。この分野の労働者は働く現場が変わるごとに雇用関係が変化したり、複数の勤め先を渡り歩いて経験を積んだりする。独自の就労形態となることから、同じ会社で長く勤めることを想定した一般的な退職金を受け取るのが難しい。そのため国は公的な仕組みとして「建設業退職金共済制度」を用意している。3月時点で、建設業で働く人の4割にあたる約200万人が入っている。
(日本経済新聞 6月1日)

人手を確保するために、退職金を減額したり廃止したりして、それを賃上げの原資とする企業もあれば、逆に、退職金を増額する企業もある。どちらが人手獲得に効果があるかは、その企業が置かれている環境による。

建設業界の場合は微妙だ。厚生労働省は、日額320円を1,000円以上に引き上げようとしているが、この差額の680円を退職金の増額と日当の増額のどちらに使った方が人手獲得に効果があるのかは、労働市場における求職者のニーズをよく分析しなければ、判断できない。建設業退職金共済制度は現場作業員や一人親方が建設業界で長年働くことを前提とした制度だ。小売業のような他産業から建設業に転職しようとしている人は、退職金増額にあまりメリットを感じないかもしれない。むしろ、賃金アップの方が転職の動機になる可能性もある。

また、労働側は他産業との退職金の格差を問題にしているが、他産業全体の退職金と建設業退職金共済制度の日額320円を比較するのは公平ではない。建設業でも、大手ゼネコンでは、退職金は2,000~3,000万円に達する。中小建設会社では、700〜900万円だ。他産業と比較するなら、建設業も大企業を含めた退職金で比較する必要がある。