退職金20年で3割目減り、物価高に勝てず
退職一時金や年金といった老後の支えがインフレに追いつかないリスクが高まっている。物価上昇を考慮した実質退職金は過去20年間で3割弱目減りしたとの試算がある。為替の円安傾向や人手不足によるサービス価格の上昇で今後、インフレ率が高止まりするシナリオも想定される。賃上げと併せて退職給付水準の引き上げも求められる。
(日本経済新聞 4月19日)
インフレは、物価上昇によって、退職した高齢者から現役の若年層への所得移転をもたらす。政府や各政党も物価高を超える賃上げを企業に求めるが、物価高を超える年金や退職金を求めることはない。インフレが高進すれば、すでに退職した、あるいは、退職が迫っている高齢者にとっては、収入が増えないのに支出が増え続けることになり、実質所得は目減りしていく。高齢者の実質所得を維持するには、「賃上げと併せて退職給付水準の引き上げも求められる。」のは事実だが、企業も新卒採用の確保を優先するため、人件費を初任給引き上げなど若年層の待遇改善に回す傾向が続く。
また、退職給付には退職一時金と年金があるが、退職一時金の増額は、リストラをするときを除いて、人手不足に悩む企業にとっては選択しにくい。引き上げるなら年金の方が合理的だ。現在、年金が物価高に劣後しているのは、年金の運用利回りが、物価上昇率より低いことに起因している。本来、インフレになれば、欧米のように中央銀行は金利を引き上げて物価を抑制するが、高市政権は、積極財政を続けるため、赤字国債の増発を難しくする国債金利の上昇に反対している。このため、日銀の利上げは遅れ、金利が物価上昇率より低い実質金利マイナスの状態が続いてきた。赤字国債増発による財政拡張をやめ、実質金利をプラスにしない限り、退職給付水準の引き上げは難しい。
