75歳以上金融所得の医療費反映、法案審議入りへ
75歳以上の高齢者の金融所得を医療の保険料や窓口負担の判定に反映させることを盛り込んだ健康保険法改正案が9日の衆院本会議で審議入りする。多額の金融所得があるのに負担が少ない人がいる問題が是正に向け前進する。
(中略)
厚生労働省は対象となる金融所得のうち約9割が算定から外れているとみる。例えば配偶者がいる後期高齢者が年金230万円、金融所得50万円を得ている場合、確定申告をすれば窓口負担は2割となるのに、申告しなければ1割になる。保険料も申告すれば年17万円のところを、申告なしなら年12万円程度に抑えられる。
(日本経済新聞 4月9日)
厚生労働省が示した年金230万円と金融所得50万円の例は、所得税+住民税+保険料の合計が分離課税で確定申告をすると増えるケースを意図的に選んでいる。年金額と金融資産のバランスによっては、確定申告で総合課税を選択すると所得税と住民税は低くなって、保険料が上がっても、それらの合計は減少する。
たとえば、このケースでは、所得税と住民税の合計は、確定申告なしでは118千円程度、総合課税で確定申告すると、73千円程度となって、税金は減少するものの保険料が5万円上昇すれば、税金と保険料の合計では、ほぼ同じかやや増額になる。逆に言うと、税金と保険料の増減が均衡するように逆算して例を作ったように見える。しかし、政府の検討の場で財務省が例示した配当収入が年500万円のケースでは、年金収入が110万円の場合、総合課税で確定申告すると税金が65万円以上減額され、医療保険料が1.5万円から53万円に増えても、それ以上に税収は減ることになる。これでは500万円の配当を得ている富裕層は、こぞって確定申告をするようになるだろう。富裕層の方が、金融所得50万円の人よりも得をするのが不平等の解消になるのか疑問だ。
負担の不平等を解消するなら、所得の補足率の向上と平等化を進めることの方が重要だ。年金や給与、金融所得の補足率は高いが、たとえば、農業所得の補足率は30~40%と言われている。金融所得のような取りやすいところから取るというやり方ではなく、政治的な抵抗はあっても全国民の平等を実現するという姿勢を貫かなければ、国民の信頼を得ることは難しい。
