王子HDが退職一時金廃止、基本給に上乗せ

王子ホールディングス(HD)は2026年春入社以降の社員の退職一時金を廃止する。中途入社の拡大や資産形成意識の高まりで月給を重視する若年層が増えており、退職金の原資で給与を引き上げる。勤続年数に応じて増える退職一時金は終身雇用を下支えしてきた。日本の雇用慣行が一段と変わる契機になる。大企業で退職一時金を廃止するのは珍しい。5年ごとに退職給付を扱う厚生労働省の「就労条件総合調査」によると、23年の回答企業3768社のうち、20〜22年に退職一時金制度を廃止した企業は0.1%だった。従業員数1000人以上に限れば一社もない。
(日本経済新聞 3月18日)

近年、退職一時金は削減傾向にある。しかし、大企業では、企業と従業員とを結びつけるエンゲージメントの維持のために必要な制度と認識されているため、廃止に踏み切る企業はない。

また、退職金には、退職所得の課税控除や1/2課税、分離課税といった税制上の優遇措置があるため、労使双方とも一定額を退職所得で得ることにメリットがあった。このため、コンサルティング・ファームのように、定年まで勤める人が少なく、中途採用も多い業種であっても、給与所得より退職所得として報酬を得ることを望む人が多い。退職所得控除は、20年以下で40万円 × 勤続年数(最低80万円)、20年超で800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年) と20年以下の場合は不利だが、税額が給与所得の半額になり、かつ、給与所得とは分離課税で高額な退職所得でも累進課税の影響を受けにくいのは魅力的だ。終身雇用とは縁遠いコンサルティング業界だが、高額の退職金へのニーズは強い。

王子HDの退職金廃止の取り組みが人材獲得における競争優位につながるためには、こうした退職金のメリットを超える月給の増額が必要になる。