定年廃止のYKK、世代間協業で組織に活力
YKKの生産技術部門に所属する浪指智さん(65)は、グローバルサプライチェーンを人材育成面で支える。富山県の主力工場を足場に、世界70カ国・地域に散らばるグループ拠点を訪れ、駐在する中堅社員に改善手法を助言したり、海外赴任を控えた国内の若手を教えたりする。
(中略)
YKKはシニアを役職から外して新陳代謝を確保する一方、その経験を生かせる役割を与える。仕事内容が同じなら現役と遜色ない賃金も支払い、モチベーションは維持する。さらにシニアと現役世代がフラットな関係で協業する環境もつくり、組織全体の競争力も高めている。
(日本経済新聞 2月22日)
高齢・障害・求職者雇用支援機構の事例サイトによれば、2024年3月31日現在、YKKでは、4,364名の従業員の内、60歳代前半は9%、60歳代後半以降は2%だ。つまり、合計11%のシニア社員が、他の社員と働いている。また、2023年3月31日現在では、10〜20代985人、30代996人、40代1,018人、50代906人、60代以上493人と60歳未満の各世代の社員数はほぼ一定だ。定年を廃止し、シニア社員が中堅、若手社員の人材育成に従事するという人事制度は、シニア社員の数が全体の約10%であり、かつ、社員の世代に偏りがないという人員構成によるところが大きい。
1人のシニア社員が9人の現役社員のサポート役になるのは実現可能だが、シニア社員が全体の2割になると1人のシニア社員が4人の現役社員をサポートすることになり、間接コストが上昇して逆に全体の生産性が低下する可能性もある。この場合は、サポート以外の業務もシニアに担ってもらう必要が出てくるだろう。また、もし、高齢社員の比率が多い場合は、定年廃止は難しくなり、むしろ、黒字リストラをしてでも高齢社員を減らすことになる。
YKKの事例は、参考にすべき点が多々あるが、日本社会にとってより深刻な課題は、高齢社員の比率が上昇した場合に、その能力を十分に発揮する雇用機会を如何に用意するかという点であることに留意が必要だ。
