企業年金、インフレ抵抗力弱く 労使が向き合う「20年で3割目減り」

2026年の春季労使交渉が始まった。経営者も労働組合も物価の伸びを超す高い水準の賃上げを目指す方向で一致する。労使の関心は生活給である給与や賞与に集中するが、抜け落ちている議論がある。将来受け取る年金や退職一時金だ。このままインフレが続けば、驚くほど年金の価値は下がる。三菱UFJ信託銀行の試算によると、物価が毎年2%上昇すると、将来受け取る年金や退職一時金の実質的価値は20年間で3割以上低下する。2000万円の退職給付は1346万円に価値が目減りしてしまうという。
(中略)
ある関係者はインフレ対応が先延ばしになっている現状を「掛け金や給付の増額などコストアップを嫌う企業、賃金や賞与の引き上げを優先したい労働組合、労使合意の原則で動けない行政という三すくみ」と評する。
(日本経済新聞 2月1日)

企業年金の給付額増額のために企業の拠出金を増やすよりも、その原資を現役人材確保のために賃上げに回す方が、企業の競争力向上には役に立つ。労働組合の構成員である現役従業員も今の暮らしが楽になる方を好む。結果、企業年金のインフレ対応は後手に回っている。

ただ、本来、インフレになれば物価は上昇するが、金利も高くなるのが普通だ。しかし、日本は、名目金利から物価上昇率を引いた実質金利がマイナスの異常事態がいまだに続いている。日銀は金利を引き上げて正常化を進めたがっているが、積極財政を掲げる高市政権は、国債の利率が上昇すると財政の大盤振る舞いができなくなるので、金利を抑制するよう日銀に圧力をかけている。米国のトランプ政権がFRBに圧力をかけているのと同じ構図だ。

企業年金の給付額を物価上昇に合わせて安定的に増額していくには、実質金利をプラスにするのが最も有効だ。金利が物価上昇率より高ければ、年金基金の運用利回りである予定利率は物価上昇を超える。個々の企業の努力よりも、政府・日銀が金融政策の正常化をする方がよほど重要な局面だ。