「退職金や年金上げ」企業の3割が検討、人事制度と連動
退職一時金や年金といった退職給付の引き上げを検討する企業が27.3%にのぼることが、三井住友信託銀行の調査でわかった。人材を資本と捉えて能力を引き出す「人的資本経営」の浸透に伴い、人事制度の改善と合わせて退職時の待遇も上向かせる傾向にある。
三井住友信託が2025年9〜11月、821社を対象に調査した。退職給付制度がある769社のうち「見直しを検討している」と答えた企業が210社にのぼった。給付引き上げの理由として「人事基幹制度との連動を図るため」が最大の48.1%にのぼった。競合他社と比べた競争力確保や福利厚生の拡充もそれぞれ3割程度が理由として挙がった。
(日本経済新聞 1月19日)
大企業の退職一時金は長らく減少傾向にあった。しかし、労働力不足で人材獲得競争が激化する中、初任給だけでなく、退職一時金や年金のような退職給付の引き上げも始まっている。新卒者の間では終身雇用よりも汎用的なスキルの習得やワークライフバランスの確保を重視する傾向が強まっており、若い世代は転職も視野に入れた柔軟な働き方を望む者が多い。ただ、もし、転職せず定年まで勤めていたらどうなるかということに無関心なわけでもない。退職給付の引き上げは、人材獲得競争において有利に働く効果は一定程度期待できる。
かつて、大企業が賃金よりも退職給付や福利厚生の充実を行っていたのは、初任給は横並びにして企業間格差を小さくするという産業界の慣習があるとともに、従業員としても、賃金に対して累進課税で高い所得税を支払うよりも、退職給付や福利厚生で便益を受けた方が有利という事情があったからだ。現在、賃上げによって所得税率が高くなる従業員が増えており、再び、賃金以外の便益供与の魅力が増してきた。
