終の棲家を求め都市へ、75歳以上の移住3割増
「老後移住」が活発になってきた。他の市区町村に移り住む75歳以上の後期高齢者は10年で3割増えた。特に生活が便利な都会に終の棲家(ついのすみか)を求める人が少なくない。人口減で医療や介護資源が限られるなか、高齢者をいかに社会全体で支えていくかが課題となる。
(中略)
なぜ高齢者は都会へ向かうのか。札幌市が21年度に市外から転入してきた後期高齢者に理由を聞くと「親族との同居」に次いで「入院・入所」が多かった。厚生労働省によると、24年時点で市内にはベッド数20床以上の病院が226カ所あり、北海道内の4割が集中する。充実した医療や介護サービスを求めて都会へ出る高齢者の姿が浮かぶ。
(日本経済新聞 11月16日)
過疎が進み高齢者の割合が大きくなった地域では、高齢者も住みにくくなっている。病院や介護施設の維持には周辺に一定の人口が必要だ。しかし、人口密度が低くなると、これらの施設の維持は難しい。その結果、医療や介護サービスを求めて近隣の大都市へ移住する高齢者が増えてきた。
マクロな観点では、大都市への老後移住は医療や介護サービスの効率化に寄与する。人口密度の低い地域で病院や介護施設を運用するのは社会的なコストが高い。むしろ、大都市の医療・介護施設の周辺に高齢者が移住した方が、社会全体のコストは低くなる。行政レベルでは、一定数の人口を一か所に集めて医療・福祉・商業などのサービスを効率的に提供するコンパクトシティ構想は市町村単位で行われているが、実際には、市町村を越えたコンパクトシティ化が起きている。行政も自治体の境界を越えた地域社会全体のまちづくりの最適化を進めるべきだ。
