何歳から高齢者? 伸びる健康寿命、70代の負担拡大論

保険制度全体として高齢者の年齢区分や自己負担の見直しを図る時期に来ているのではないか」。健康保険組合連合会の佐野雅宏会長代理は10月、社会保障審議会(の専門部会でこう述べた。医療費の窓口負担割合は69歳までは3割、70〜74歳は原則2割、75歳以上は原則1割となっている。70〜74歳や75歳以上も所得に応じて最大3割まで上昇する。健保連は9月公表した提言で、この年齢区分の見直しを訴えた。74歳までは全員3割負担とした上で、75〜79歳も原則2割に引き上げるという内容だ。「現役並み所得」と呼ばれる3割負担の対象者も広げるよう求めた。
(日本経済新聞 11月12日)

自民党と日本維新の会が10月に交わした連立合意書には、「年齢によらない真に公平な応能負担の実現」「高齢者の定義見直し」と記されている。この2つの主張は、高齢である人の健康保険負担を増加させるという方向性では一致しているものの、論理的には矛盾している。「年齢によらない」のであれば、「高齢者」であるかどうかは関係がない。

公平性という観点に立てば、重要なのは年齢で区別しないという点だ。その意味では、年齢によらず窓口負担を一律3割とするという財務省の案は理にかなっている。高齢者は比較的低所得の人が多いので窓口負担を低くするというのが現行制度だが、そもそも高齢者の低所得対策は、年金や税制による所得の再分配に委ねられるべきであって、健康保険が担うものではない。