50代の早期退職、年収半減でも転職困難
日産自動車やパナソニックホールディングス(HD)、三菱電機など大手製造業が早期退職の募集に踏み切った。主な対象となる50代以上のベテラン社員は年収を半減させても、転職先がなかなか決まらないことも多い。大企業が育ててきた「ゼネラリスト」は価値をアピールしにくいという声がある。日本の人材育成の課題も露呈している。
(中略)
転職市場でシニア人材の需要があるのは、国内の企業総数の99.7%を占める中小企業だ。新卒・中途を問わず、大企業に比べて人材獲得の競争力に劣るためだ。年収が500万円程度の企業も多く、管理職で1000万円以上が一般的な大企業出身者とは給与面でミスマッチが発生している。
(日本経済新聞 11月12日)
大企業から中小企業への転職では、よほど専門的なノウハウを持っている人でない限り、年収が低下する可能性は高い。一方、早期退職で退職金が増額され、金融資産をたとえば5000万円持って退職したとすると、年10%の利回りで運用すれば年500万円の利益を得ることができる。年収500万円の中小企業に転職するより、無職のまま資産運用で生活した方が楽だと考える退職者が一定数いるのはこのためだ。実際、東京市場で最も多く購入されている投資信託であるeMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)は、過去1年で21.77%基準価額が上昇した。5000万円投資すれば、1000万円以上の利益を得た計算だ。
しかし、働くということは、社会とつながって何らかの役割を果たし、社会に貢献することでもある。収入が低くても、社会貢献の機会があるなら、中小企業やNPOに参加するのも人生の選択肢のひとつだ。因みに、NPOやボランティア団体では、専門的知識だけでなく、そもそも組織の作り方や運営方法がわかっていない団体もある。そこでは、大企業退職者の「ゼネラリスト」の能力が役に立つこともあだろう。
