IHIがシニア従業員の給与減額を廃止、薄れる「定年の意義」
60歳を超えて働くシニア従業員の待遇や働き方を見直す動きが広がっている。例えばIHI。定年後再雇用・定年延長制度で働く60~65歳の従業員について、賃金の一律減額を見直した。2025年4月以降は現役世代と同水準の賃金を支給している。体力面や介護などの都合で週5日勤務が難しい場合には、週休3日で働ける制度も導入した。
(日経ビジネス 9月25日)
IHIに限らず、60歳以降の処遇を改善し、現役世代と同水準に引き上げる企業が増えている。定年延長に踏み切る企業はまだ過半には達していないが、再雇用でも給与が維持されるならば、定年延長と処遇はそれほど変わりがない。再雇用社員の業務内容も現役社員とそれほど違いがなくなってきた。
一方、50代の社員の処遇は他の世代に比べて低く抑えられる傾向にある。その結果、60歳を挟んで処遇が激変することが少なくなり、若年層と50代との給与差も小さくなった。今後もこの傾向が続けば、年功序列の要素は縮小し、年齢ではなく、能力や成果で処遇が決まるようになる。それは、財務的な成果の最大化を目指す視点からは合理的な人事制度だ。
ただ、成果評価で処遇がほとんど決まる制度では、従業員が短期的な成果を求める仕事に注力しがちになることにも留意する必要がある。特に、退職が迫っているシニアにとって長期的な成果は目標にしにくい。この問題への対応は職場によって解が異なると思われるが、シニアの目標の中に、知識やノウハウの組織内での共有など、退職後の組織にも貢献できる項目を入れておくのも一案だ。
