高齢者の金融資産、60代単身世帯の3割ゼロ

日銀は18日、家計が保有する2025年4〜6月期の金融資産が前年同期比1%増の2239兆円で過去最高になったと発表した。60歳以上の世帯が6割前後を保有するとみられるが、物価高と株高の影響で高齢者世代の資産額の二極化が進んでいる。日銀が25年4〜6月期の資金循環統計(速報)を発表した。家計の金融資産は高齢者に偏る一方、高齢者世代でも差が目立ち始めた。
(日本経済新聞 9月18日)

日銀は定期的に資金循環統計を発表しているが、今回、特に、高齢者の金融資産について、資産が増加している人がいる一方で、金融資産がゼロである人も3割いることを強調するのには、政治的な意図がある。これは、現役世代や資産を持っていない高齢者への所得の再分配の財源確保のために、金融所得や金融資産への課税を強化するための布石だ。

しかし、本来、国のあるべき姿は、金融資産を持たなくても文化的な老後を過ごせる社会でなければならない。金融資産を持たない高齢者が物価高のインフレ局面で生活が苦しくなるのは、年金の増額が物価上昇に追い付かない年金制度になっているからだ。政府が物価上昇を上回る賃上げを目指すなら、同様に、物価上昇を上回る年金増額を行わなければバランスは取れない。

さらに、施策として重要なのは、物価高そのものを抑制することだ。そのためには、日銀は金利を上げ、政府は減税や歳出拡大をやめ、国債発行額を減額して、市中の通貨流通量を減少させる必要がある。加えて、高齢者の雇用機会を拡大して、年金や金融所得以外の収入源の確保を進めることが重要だ。