転ばぬ先のシニア労災対策、社員にAI体力診断
ビル清掃・管理のアルコットは人工知能(AI)による社員の体力診断を今秋導入する。所定の姿勢を一定時間保てるかなどを検査し、階段昇降時の転倒といった労働災害の発生リスクを算出する。ビル清掃業は体力が衰えがちな高齢の社員も多く、AIによる正確なデータを基に安全対策を進め、長く働ける環境を整える。
慶応大学発スタートアップの「AYUMI BIONICS」が開発した体力診断システムを利用する。社員に片足立ちの姿勢を30秒程度維持してもらい、スマートフォンで撮影した動画をAIで解析する。バランスの取り方や筋力・関節の状況を基に労災リスクを4段階で示す。下半身の動作から「足腰年齢」も推定する。
(日本経済新聞 9月11日)
AIの応用分野に設備の予防保守がある。たとえば、工場の製造設備に各種センサーを取り付け、そこから収集したデータを分析して、近い将来の不具合発生確率を予想するというものだ。不具合が実際に起きてから修繕するよりも、事前に不具合が発生しそうな箇所を見つけて設備の交換などの予防措置を行った方が、保守費用も抑えられるし、何より工場の稼働率を維持することができる。
従業員も同じだ。社員が健康を害したり、けがをしたりする前に、それらの事象の発生確率を知ることができれば、事前にリスク低減のための対策を取ることが可能になる。問題は、どのようにしてデータを集めるかだが、AYUMI BIONICSは、片足立ち姿勢の動画をAIで解析することで、体力の状態を把握することを可能にした。これによって、工場設備のようにたくさんのセンサーを体につけなくても体力情報を得ることができる。この技術を進化させれば、将来は、業務を行っている様子を撮影した動画から体の状態を判断することができるようになるだろう。そうなれば、様々な業界におけるシニアの就労の安全性は、各段に向上するはずだ。
