2025年の早期退職1万人突破はや前年超え、管理職年代の削減目立つ
日本の上場企業で人員削減が進んでいる。2025年の早期退職の募集人数は足元で1万人を超え、24年通年を早くも上回った。社数は前年より少ないが、製造業を中心に管理職年代の大規模な削減が目立つ。トランプ関税など事業環境の変化や人工知能(AI)時代を見据え、海外で先行する構造改革の動きが日本でも広がってきた。
東京商工リサーチによると、25年8月末までに募集が明らかになった国内上場企業の早期・希望退職者数は31社で計1万108人だった。24年は通年で1万9人だった。社数は前年同期より2割以上少ないが、人数は約4割も多い。パナソニックホールディングスが5000人、ジャパンディスプレイが1500人募集するなど電気機器が最も多く、製造業で約9割を占めた。
(日本経済新聞 9月5日)
今年は、パナソニックの5000人、ジャパンディスプレイの1500人と電機業界の大企業が大規模なリストラに踏み切ったことで、早期退職の募集人数は、早々に1万人を超えた。ジャパンディスプレイの人員削減は、事業の縮小に伴うものでやむを得ない面もあるが、パナソニックは利益が出ている中での事業構造改革によるものだ。利益を法人税や自社株買いのような株主還元に使うより、退職金の増額に使って人員のスリム化と若返りを図った方が、将来の成長につながるもの事実であり、合理的な経営判断とも言える。
しかし、この先の早期退職の募集は、管理職年代に集中するとは限らない。欧米では、AIの普及によってAIに置き換わる業務が増え、人員の余剰が目立つようになってきた。この場合、経験豊富なベテランよりも、経験の浅い若年層の方が解雇されやすい。AIで売上と利益を伸ばしているマイクロソフトでも、AIの導入を理由とする大量の人員削減を年齢に関係なく始めている。
この流れは、早晩、日本企業にも及ぶ。たとえば、富士通は、AIによるソフト開発の自動化を進め、海外拠点でのIT人材の採用を抑える予定だ。早期退職の募集対象は、年齢ではなく、ジョブや能力によって選別される時代が、そこまで来ている。
