iDeCo増額が歯止めになるか、急増中の「異形の企業年金」
2027年から個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)の掛け金上限額が大きく増える。例えば企業年金のない会社員は月2万3000円から月6万2000円になる。イデコ増額は急増中の「給与減額型選択制企業年金」という「異形の企業年金」に歯止めをかけるかもしれない。
給与減額型とは給与の一部を対象に、給与でもらい続けるか、企業年金の掛け金としてもらうか自分で選ぶ仕組み。企業によっては「ライフプラン手当制度」などと呼ぶ。大半は個人が運用責任を負う確定拠出年金(DC)だが、会社が運用責任を負う確定給付企業年金(DB)でも一部で急速に広がっている。
(日本経済新聞 9月1日)
給与減額型選択制企業年金が異形かどうかは、意見の分かれるところではあるが、急増中であることは確かだ。一般的に、この制度を使うメリットが大きいのは、厚生年金保険料の上限を超える給与をもらっている比較的高所得の給与所得者だが、今では低所得層にまで広がっている。
高所得者は、給与を減額して年金にまわすと、累進課税によって高い税率が課せられている所得税を減らすことができる。一方で、厚生年金保険料の上限は超えているので、将来の厚生年金の受給額は減らず、年金にまわした給与の分、年金は増額される。高所得者にとっては、異形というより合理的な制度だ。
しかし、給与が厚生年金保険料の上限に達していない人にとっては、給与の減少が、厚生年金の掛け金の減少につながり、将来の厚生年金の受給額は減額となる。給与を年金にまわして年金を増額したはずが、厚生年金の減額と相殺されて、トータルでは得なのかどうかは微妙なところだ。得をするのは、厚生年金の企業負担を削減できた企業だけということもあり得る。まずは、勤労者自身がこの事実を認識して、自分にとって最善の道を選択するよう心掛けることが重要だ。
