シニア社員の「孫育て」企業が支援、働くモチベーションにも
孫育て支援制度を導入する企業が増えている。社会で子育てしやすい環境の整備が求められているなか、祖父母もその貴重な担い手だ。孫育てに関わりたいシニア社員の声に応える。定年延長などで職場のシニア社員比率は高まっている。孫育てに会社が手を貸すことで、シニア社員の働くモチベーションを刺激したいという企業の思惑もある。
(中略)
そもそも子育てと孫育てを区別する必要があるのか――。システム大手のTIS(東京・新宿)は、21年度に子育て支援策をそのまま孫まで広げた。通算2年まで取得できる育児休業や、中学校就学前まで利用できる時間短縮勤務などを社員は対象が子でも孫でも同様に使える。
(日本経済新聞 8月26日)
孫育てを支援する企業が増えるにつれ、子育てと孫育てを区別しない企業もでてきた。今までは、孫育て支援は特別なケースのための制度と見られていた面もあるが、65歳を過ぎても働くことが一般化すると、シニア社員にとって孫育て休暇を取ることは普通になるだろう。
孫育て支援はシニアの働くモチベーションへの刺激だけでなく、子育て世代の出産のモチベーションにもつながり、出生率の向上に寄与する。全国の都道府県の中で、最も出生率が高いのは沖縄県だ。沖縄県の一人当たりの平均所得は、データのある40都道府県の中では最低だが、子供の数は多い。お金がないから子供を持てないとよく言われるが、そう言っている人に行政がお金を配布しても、その金は育児以外の支出に使われる。つまり、支出の優先順位における子育ての順位が低い人が増えたことが出生率の低下の原因だ。経済的に豊かな国ほど出生率が低くなるのも同じ理由による。育児に必要なのは、金よりも時間だ。時間は、両親だけでなく祖父母も協力することによって増やすことができる。沖縄は、大家族や地域の連帯が残っている地域で、多くの人の時間を分けてもらうことが可能だ。同様に、企業による孫育て支援は、働くシニア社員の時間を孫の育児に分けることを実現する。
