望んだ早期退職、元電通子会社社長が開く「月1食堂」

定年を待たず早期退職し、自由な時間を謳歌したいと願う人も多いだろう。だが待ち望んだはずの選択でも、思わぬ落とし穴が潜んでいることもある。電通子会社の社長などを務めた宮本義隆さん(54)もその穴にはまった一人。苦しんだ経験をもとに始めたのが、月1回の食堂だ。
(中略)
共感した3人で23年3月、TanoBa合同会社を設立。近隣への聞き取りや調査を重ね、世代間交流が乏しいことが問題だとして、食堂立ち上げが決まった。同年10月に食堂が正式にスタートし、これまで20回以上開催した。延べ400人以上が訪れ、最近は参加費だけで安定的に黒字を確保できるようになってきた。目指すのは、福祉ではなく「ソーシャルビジネス」として広げていくこと。世の中には孤独に限らず様々な社会課題がある。一つひとつに向き合い解決につなげるには、持続可能な取り組みとするための基盤が必要になる。
(日本経済新聞 8月24日)

65歳まで同じ企業に勤める人が多い中、自ら早期退職をして、早めに第2の人生に乗り出す人もいる。特に、起業を目指すなら、残り時間の長い、若いうちに始めるのが良いのかもしれない。ただ、起業の目的があいまいなまま始めようとすると、ビジネスとして成立させることが難しくなることもある。

そのようなとき、社会課題の達成を目的とするソーシャルビジネスを目指すことは、事業目標の選択肢の一つだ。ソーシャルビジネスでは、少なくとも解決すべき社会問題が存在し、達成すべき課題がある。つまり、既に、需要が存在し、顧客がいる。シニアの起業で往々にして壁となる新規顧客の獲得が比較的容易だ。

難しいのは、収益を上げ続けて持続可能な事業にすることだが、そこでシニアが蓄積してきたノウハウや経験を活用して革新的な商品やサービスを提供できるなら、事業として成功させることができる。この記事の元電通子会社社長の場合は、広告マンとしての企画力が役に立った。起業はリスクを伴い、すべての人が成功するわけではないが、社会課題と自分のノウハウがうまくマッチングした場合には、成功の確率は高くなる。