シニア住宅で消えぬ過剰介護、低家賃で囲い込み
社会保険料が高すぎる――。先の参院選では手取りの増加や保険料引き下げが論点になった。少子高齢化が主因だが、給付のムダが保険料の上昇を招いている面もある。介護分野では報酬の上積みを狙う事業者が、シニア向け住宅の入居者に過剰なサービスを提供する事例がなくならない。行政も是正を急ぐが、実態の把握が難しく解消は遠い。
(中略)
介護保険の仕組み上、住宅型施設の事業者が自らサービスを提供するより、外からサービスを受ける方が出来高払いで多くの介護報酬を得られる。比較的安く入居させ、併設・隣接する関連法人の事業所が上限近くまでサービスを提供し、利益を上げる事業モデルが成立している可能性が高い。
(日本経済新聞 8月3日)
介護サービス計画書を作成するのは、ケアマネージャーの仕事だ。本来、ケアマネージャーが中立で要介護者の利益の側に立っていれば、過剰介護は発生しない。しかし、施設の事業者が抱えるケアマネージャーは、事業者の利益を優先することもある。また、中立なケアマネージャーであっても、要介護者が認知症などでコミュニケーションが難しい場合は、介護事業者の意見に左右されやすい。過剰介護を減らすには、サービスレベルが適正かどうかを客観的に把握する仕組みが必要だ。事業者がケアマネージャーへ圧力をかけることは介護保険法で禁止されているが、罰則を強化するなど、ケアマネージャー制度の改革が求められる。
一方で、住宅型施設は、利用者である要介護者にとっては、コストパフォーマンスの良い施設となっている現実もある。一般の老人介護施設に入居するには収入や資産が足りない人でも、介護サービスの質と回数を調整すれば、住宅型施設には入居できる。社会全体としても、一人暮らしの高齢者が分散して住むより、住宅型施設のような集合住宅に集まって住む方が、行政コストが少ない。これらの利点にも留意する必要がある。