持病配慮せず再雇用条件を提示、元従業員がパナ子会社を提訴へ
定年後の再雇用契約で持病に配慮した労働条件を示さなかった会社側の対応は高年齢者雇用安定法の趣旨に反するとして、パナソニックホールディングス(HD)の子会社の元従業員男性(60)が近く、会社側に地位確認や賃金の支払いを求める訴訟を大阪地裁に起こすことが判明した。
(毎日新聞 6月30日)
希望者が65歳まで働けるよう雇用機会の提供を義務付ける高齢者雇用安定法だが、その解釈には幅がある。このパナソニックHDの事案のように、雇用する側と雇用される側で主張の対立が生じて、訴訟となるケースも今後増えていきそうだ。
一般的に言って、企業が、担当させるのに適当なポジションがなく、どちらかといえば辞めてもらいたいと思っている従業員に対して、その従業員が受け入れられない雇用条件を提示するというのは、あり得ることだ。一方で、従業員の希望する条件の業務がない場合には、希望していない業務でも提示せざるを得ない。大企業では、多様な業務を多くの人員で行っているため、従業員が希望する業務を探す余地は比較的あるが、中小企業だと業務の選択肢が少なく、希望に沿えないこともある。
今回の事案もパナソニックHDの子会社がより大きな会社であれば、従業員が希望する業務を社内で提示することができた可能性もある。しかし、この従業員が所属していたパナソニックエンターテインメント&コミュニケーションは、子会社とはいえ、世界で9,600人、日本だけでも2,600人の従業員を抱える規模だ。この規模で、希望する条件の業務を提示できなかったのか、今後、法廷で争われることになる。