フレイルをデジタルで予防、高齢者の健康維持後押し

高齢者の心身が衰えるフレイル(虚弱)を予防しようと、首都圏の自治体がデジタル技術を活用した取り組みを進めている。歩行数に応じたポイントを付与するスマートフォン向け健康アプリや、生成AI(人工知能)を活用した会話サービスなどを通じてフレイル予防を後押しする。自治体が取り組むデジタルサービスの代表例が歩数管理アプリだ。フレイルの要因の一つとされるのが歩行量の減少。外出をしないことで消費エネルギーや食事量が減り、体重や筋肉量が減る。これらが更なる歩行量減少の要因となり、悪循環「フレイルサイクル」を生むためだ。
(日本経済新聞首都圏版 6月20日)

自治体による中高年の健康増進を目的としたデジタルサービスが増えている。この記事では、さいたま市、埼玉県、千葉県柏市、東京都品川区、神奈川県横須賀市などの自治体の取り組みが紹介された。歩数管理アプリは、特に中高年向けというわけではないが、市民の健康維持のためのデジタルサービスとしては定番だ。歩数のカウントだけでなく、様々なサービスを付与して総合的に健康増進を図っている。ポイントの付与など、インセンティブを与えているのも自治体のサービスの特徴だ。自治体としては、サービスの運用に費用がかかるものの、市民の健康増進に役立てば、介護や医療の費用抑制につながるため、自治体としてもインセンティブのある事業になっている。

健康増進の効果も見えてきた。たとえば、横浜市が行っている「よこはまウォーキングポイント」の事業検証では、参加後5年間の平均歩数が10,000歩/日以上の参加者は、未登録の人と比べて糖尿病の新規発症率が62%低く、重症化率が67%低いことが分かった。また、3年間継続して参加した人は未登録の人に比べ、高血圧の新規発症者が相対的に12.3%少なく、高血圧が抑制されることで、高血圧が招く脳梗塞も抑制され、合わせて年間約9000万円の医療費抑制になっていると推計されている。歩いているから元気という側面と元気だから歩けているという側面があるが、双方向の因果関係が良い影響を与え合って、このような相関関係を生んでいるようだ。