「収入伴う仕事」する高齢者、初の4割超

内閣府の調査で、「収入を伴う仕事をしている」と答えた高齢者が42・7%と、初めて4割を超えた。2019年度の前回調査時に比べ、5・4ポイント増加。政府は10日、こうした調査結果を盛り込んだ25年版「高齢社会白書」を閣議決定した。
(中略)
 仕事をしている人に理由を尋ねたところ、「収入のため」と回答した人が55・1%と最も多かった。他に「働くのは体に良いから、老化を防ぐから」が20・1%、「自分の知識・能力を生かせるから」が12・4%と、健康や自己実現などを目的とした回答もあった。何歳ごろまで働きたいかを問う質問では、「65歳くらいまで」が23・7%と最も多かった。「働けるうちはいつまでも」も22・4%あった。
(毎日新聞 6月11日)

就労している高齢者は着実に増えている。デフレ状態から脱却して物価上昇が続き、逆に、インフレが懸念される状況になっている現状では、収入のために仕事を続ける人が増加するのは自然なことだ。今の年金制度では、マクロ経済スライドによって年金の上昇が物価や賃金の上昇よりも抑えられている。年金の改定率は、物価変動率と賃金変動率の低い方から、被保険者数の減少率と平均余命の伸び率を基にしたスライド調整率を引いたものだ。そのため、インフレ下では、物価高に年金の増加が追い付かず、収入のために仕事をする必要性は年々高くなる。一方、デフレで物価が下落している場合には、マクロ経済スライドによる調整は行われず、年金額は物価の下落分のみ引き下げられ、物価と年金の変動の差は生じない。つまり、年金受給者にとっては、デフレでは実質所得は変化しないが、インフレでは実質所得が減少することになる。

このように、インフレは年金が主たる収入である高齢者にとって厳しい経済状況をもたらす。しかし、適度なインフレであれば、好景気となって雇用を増やす効果もある。足元では、賃金の上昇も物価上昇に追い付かず、実質賃金は減少を続けているものの、雇用機会が拡大し、仕事の選択肢が増えるのは、高齢者にとっても良いことだ。高齢者としては、当面、この機会を積極的に活用して、年金以外の収入源の確保を図ることになりそうだ。