元銀行員、定年機に「京大生」に 学びはいつでも何度でも
5月下旬、京都大学の図書館の一角。「この前に言っていたあの論文、進んでる?」。白髪頭の男性が尋ねると、その隣で若い学生が「もう少しで投稿できると思いますよ」と応じた。2人は教員と教え子ではない。机を並べて学びを深めてきた「学友」だ。瀧本哲哉さん(69)は2015年4月、58歳で同大学経済学部に入学した。大学院博士後期課程を経て、現在は研修員として研究を続けている。
(日本経済新聞 6月1日)
定年退職をした後、再び大学に学生として戻る人は一定数いる。大学院へ行く人が比較的多いが、中には、この記事が紹介するように大学入試を経て学部に入学する人もいる。高齢になってからの入試は大変ではあるが、試験勉強も気楽に取り組むと面白い。高校生のときには気づくことのなかった楽しさを発見することもある。
人の向上心は、おそらく、本能に近い。程度の差こそあれ、誰にでも備わっている能力だ。加齢とともに体力は低下していくが、学ぼうとする意欲がある限り、知識は増やすことができる。
高齢者に対するリスキニングの機会は様々あるが、大学もまた高齢者の学習意欲の受け皿のひとつだ。大学が、高齢者に対して知識や問題解決能力を向上させる機会を与えることで、高齢者がそこで向上させた能力を社会に還元することを可能にすることには、一定の社会的意義がある。