大企業の雇用者10年で26%増、中小は高齢者頼み
大企業への人材シフトが進んでいる。業績改善を背景に大企業は雇用者数が10年前から26%増えた。中小企業は若い世代の採用が難しく、高齢者への依存を強める。今後は労働力減少が見込まれ、人材争奪は激化する。中小企業は賃上げや柔軟な働き方の導入を急がなければ人手不足を解消できない。
総務省の労働力調査から、従業員規模ごとに企業の雇用者数を集計した。従業員1000人以上の大企業は2024年に1489万人。不況下でリストラや採用抑制が続いた02年を底に増加傾向が続いている。雇用者全体に占める割合も14年の21%から24年は24%に伸びた。従業員100〜999人の中堅企業は24年に1602万人と10年で14%増えた。
(中略)
一方、従業員99人以下の中小企業は2435万人で10年前より0.2%減った。雇用者に占める割合は44%から40%に下がった。15〜64歳が125万人減った一方で、65歳以上が112万人増えた。人材獲得に苦労するなかで高齢者頼みの傾向が鮮明になっている。
(日本経済新聞 5月25日)
近年、政府が賃上げを財界に求めていることもあり、大企業を中心に賃上げが続いている。かつては、賃上げは自社の経営状況よりも相場に合わせる傾向が強かった。業績の良い企業も利益の上振れ分は賞与で分配し、給与は他社と横並びにしておくのが常だった。しかし、今や、給与も自由競争の時代に突入したようだ。余力のある企業は他社に先駆けて賃上げに動き、自社の人材確保を優先している。
賃上げをして人材を確保しようとする企業は、高い給与でも利益を上げられる企業であり、労働生産性が高い企業だ。規模の大きな企業の方が労働生産性は高い傾向があるため、給与水準の自由化が進むと、中小企業と大企業の賃金格差は拡大する。その結果、人材確保における大企業の優位性が高くなり、雇用者は大企業へ流れた。中小企業には厳しい状況ではあるが、生産性の高い企業に労働力が移動することは、経済全体にとってプラスに働く。中小企業としては、低賃金でも人が集まるよう努力するのではなく、AIやロボットなどの新しテクノロジーを活用して、高賃金でも利益を出せる企業に脱皮するよう変革することが重要だ。