シニア世代が「孫の世話」をしなくなる「家族の多様化」の現実

現在のシニア世代には、子どもの頃に自身が孫の立場で祖父母との暮らしを経験したり、大人になって以降、親や祖父母との同居生活を通じて、子育てや介護を経験した人もいるだろう。以前は結婚した子や孫と同居する高齢者が、現在より多かったからだ。しかし、これから高齢期を迎える若いシニア世代には、自分の子どもが親となって孫の祖父母の立場になった際に、夫婦のみの世帯や単独世帯で暮らす人が多いだろう。三世代世帯のシニア世代は、時代とともに減少している。
(中略)
内閣府がシニア世代を対象に行った調査によると、子世代との関係に関する若いシニア世代の意識は、別居・交流型の関係(子どもや孫とは、ときどき会って食事や会話をするのがよい)を志向する人が、同居・生活型の関係(いつも一緒に生活できるのがよい)を志向する人より多くなっている。
(TBS CROSS DIG 5月24日)

休暇を与える孫育て支援制度を設けて従業員が孫の世話をしやすくしている企業がある一方で、孫の世話をしている高齢者の割合は減っている。ただ、生涯未婚の人の割合が増加し、孫がいない人の割合も増えているので、孫の世話をしない人が増えるのは自然だとも言える。加えて、都市部では三世代同居は珍しくなった。つまり、孫の世話をする気はあっても近くに孫がいないという高齢者は増えている。

ただ、孫が近くにいても、親に代わって毎日のように子供の世話をすることには抵抗がある祖父母もいる。今の祖父母の世代は、既に三世代同居が少なくなった時代を生きていた。自分が祖父母になっても、子や孫の家庭とは一定の距離を保っていたいと思っている高齢者も多い。孫の世話は時々しても子や孫の家庭には深く踏み込まず、逆に、自分の
老後の世話も子や孫に多くは期待しない。そんな関係がお互いに心地よいのかもしれない。