退職金、勤続30年以上は給付額減
「老後資金の柱」として位置付けられてきた退職金を取り巻く環境は今、大きく変化している。長年続いていた終身雇用や年功序列といった賃金制度が当たり前のものではなくなり、退職金の額は年々減少している。
(中略)
勤続年数ごとの金額推移では、勤続30年以上での減少が目立つ。途中で調査対象が一部変更されているため一概に比較はできないものの、勤続35年以上で受け取れる退職金の額は、2003年から23年の20年で500万円以上も減少している。逆に、勤続30年未満では13年以降、上昇傾向も見られる。雇用の流動化で年功序列が崩壊していることや、退職金を割り増すことで早期退職を促す企業が増えていることなどが背景に考えられる。
(日本経済新聞電子版 5月11日)
退職金が減少しているのにはいくつか原因があるが、最も影響が大きいのは、50代の賃金が抑制されてきたことだ。「雇用の流動化で年功序列が崩壊している」というよりも、年功序列が40代までになって、50代は昇給が止まるようになったという表現が正しいかもしれない。勤続30年以上の人は50代だ。退職時の給与が低くなれば、退職金も低くなる。一方、勤続30年未満の人、すなわち、40代の人の給与は比較的上がっている。加えて、この記事が指摘しているように、リストラで早期退職となれば、退職金が上乗せされて従来よりも退職金は増加する。
現在の50代は、若いころは薄給で働き、ようやく給与が高くなったかと思えば昇給が止まり、退職金まで減額されて、不運な世代だという思いもあるかもしれないが、悪いことばかりでもない。たとえば、大企業では、60歳以降の処遇は改善傾向にあるし、今までよりも長く働ける環境も整ってきた。70歳まで働くのであれば、生涯収入はそれほど悪くない可能性もある。