自宅売却後も賃貸で住めるリースバック、高齢者の契約トラブル急増
持ち家の売却後に賃貸で住み続ける「リースバック」を巡り、高齢者が巻き込まれる消費者トラブルが急増している。まとまった資金を得られる一方、契約内容を十分に理解していなかったために退去を余儀なくされるケースも。国民生活センターはメリットとデメリットを慎重に検討するよう呼びかけている。
(中略)
国土交通省が24〜25年に不動産業者を対象に実施した実態調査によると、大半が65歳以上の高齢者世帯の顧客ニーズを受けてリースバック事業に取り組んだと回答。定期借家契約の物件は全体の48%とほぼ半数を占めた。全国の消費生活センターに寄せられるリースバックに関する相談の中には「内容をよく理解しないまま契約書にサインをしてしまった」(関東地方に住む70代の女性)といった声も少なくない。
(日本経済新聞 5月11日)
持ち家のリースバックは、高齢者が現金を得る手段として一定の需要がある。持ち家を売却して現金を得る一方、賃料を支払って同じ家に住み続けることができるのは、経済的に助かると感じる高齢者が一定数いるようだ。企業でもキャッシュフローの改善に迫られて自社ビルのリースバックをすることがあるが、企業の場合は、日々の売上から賃料を支払い、将来、大きな利益が上がったときには買い戻すこともできる。しかし、年金しか収入源がない高齢者の場合は、持ち家の売却で得た現金を使い果たした後は賃料を払い続けるのも厳しい。不動産業者としては、将来の賃貸料不払いのリスクを無くすために、定期借家契約にしたいところだ。その結果、定期借家契約の物件は全体の48%という異様に高い定期借家率になっている。
現金が必要なら、リースバックよりも持ち家を担保にして融資を受けた方が良いかもしれないが、どちらを選択するにしても、選択すること自体に問題はない。問題は、リースバック契約した高齢者が定期借家の意味を理解しているかどうかだ。国土交通省はリースバック利用のガイドラインを作っているが、そもそも、ガイドラインを読むような人は定期借家契約のデメリットを知っている。契約内容を理解していることを確認する義務を不動産業者に負わせることも考えるべきだ。