高齢者労災防止、努力義務

働く高齢者の労災防止に向けた作業環境改善を努力義務とする改正労働安全衛生法が8日、衆院本会議で可決、成立した。
(中略)
 厚生労働省によると、雇用者全体における60歳以上の割合は23年に18・7%だったが、休業4日以上の労災に遭った割合は60歳以上が29・3%に上った。加齢による身体機能の低下が原因とみられ、転落や転倒の事故が多く、休業見込み期間も長引く傾向がある。厚労省は20年に高齢者の労災防止に向けたガイドラインを公表したが、現場での取り組みは低調だ。同省は改正法に基づく指針を策定し、努力義務化により環境改善を促す。
(山陽新聞 5月8日)

労災に占める高齢者の割合は年々増加している。人手不足で高齢者に依存する度合いが高まる一方で、作業環境は昔と同じという現場も多いことが原因のひとつだ。高齢者も企業も、今まで同じ環境で同じ作業を安全に繰り返してきた経験から、そこで労働災害が発生するとは想定していないという面もある。しかし、加齢による身体機能の低下は、高齢者本人も気づかないうちに、訪れるものだ。

企業としては、本人の申告がなくても、常に労働環境の安全が図れるよう、環境改善に努める必要がある。「働く高齢者の労災防止に向けた作業環境改善を努力義務とする」のは、時宜に適った措置だ。ただ、厚労省のガイドラインに記載されているような高齢者の労災防止に向けた作業環境改善は、高齢者だけでなく、若い世代も含めた、すべての労働者の安全確保にも役に立つ。対象を高齢者に限定せず、一般的な作業環境改善として努力義務化するべきだろう。