電力データで高齢者のフレイル検知、5年後に全国200自治体

中部電力は電力データを使った高齢者の虚弱検知サービスを全国の自治体向けに本格展開する。各戸の電力使用量を人工知能(AI)で解析し、高齢者の心身が衰える「フレイル(虚弱)」のリスクを高い精度で判定する。2025年度に27件と見込む導入自治体数を、5年後には200件に増やす。
サービスは「eフレイルナビ」。独り暮らしの高齢者世帯を対象に、電力スマートメーターから使用電力量を30分ごとに計測。高齢者の同意を得たうえで、データをAIで分析する。フレイルとなった人は外出時間が減ったり室内での活動量が減ったりするため、電力使用量の変動幅が縮小する傾向がある。
(日本経済新聞 4月24日)

2023年4月からサービスが開始された「eフレイルナビ」。3年目に入って、中部電力は普及を加速させようとしている。特別なセンサーを自宅に設置する必要がなく、スマートメーターが送信してくる電力使用量のデータのみで分析できるため、コストパフォーマンスが良い。加えて、高齢者本人や家族から使用料を徴収するのではなく、自治体に販売するというビジネスモデルも功を奏している。

中部電力によれば、三重県東員町における実証実験では、AI分析でフレイルと判定された人の83%がフレイルであったという。電力使用量のパターンとフレイルであるかどうかとの間には有意な相関関係がある。そうであれば、逆に、電力使用量からフレイルでない高齢者を分類することも可能だ。フレイルの可能性が高い高齢者には健康維持のための支援を行う一方、フレイルの可能性が低い高齢者に対しては、就労や社会参加の支援を行うこともできる。自治体が、今後、このサービスの新たな活用方法を開拓していくことを期待したい。