「毎月分配型」はNISAの哲学に沿うか、プラチナで解禁へ
金融庁が高齢者向けの新しい少額投資非課税制度(NISA)を創設する検討に入った。運用益などを分配金として毎月払い出すタイプの投資信託を認めるのが柱だ。長期の資産形成というNISAの哲学に沿うといえるのか、人生のステージに応じた制度改革を巡って議論が起きている。
(日本経済新聞 4月19日)
現行のNISAで「毎月分配型」の投資信託が対象外となったのは、毎月分配型は、運用益が出なくても元本を取り崩して分配するため、老後資金を蓄えるための長期投資というNISAの趣旨に合わないからだ。しかし、信託報酬や手数料が高いため、かつては、金融機関が積極的に売り、元本が減っていくという事実を明確に認識していない高齢者が多く買って問題となった。
NISAの対象外となった今でも、毎月分配型は高齢者にある程度人気がある。一定金額が毎月振り込まれることを便利と感じる高齢者が少なからずいるようだ。しかし、信託報酬や手数料が高い上に、NISAでなければ分配金に課税もされるため、合理的な選択ではない。むしろ、無分配型を購入して、現金が必要なときには、その都度、必要額を解約した方が、費用が少なく合理的だ。もし、投信購入者がそうした処理が煩わしいと感じるほど金融リテラシーが低いとすれば、金融機関はそういう高齢者に、投資信託ではなく、元本が保証された貯蓄を勧めるべきだ。
現行のNISAでは、資金の多くが、購入手数料が無料で、信託報酬が著しく低い米国S&P500や世界株式のインデックス型の投信に投資されており、金融機関の収益にはあまり寄与していない。NISAに毎月分配型が加われば、手数料や信託報酬がより高い投信へNISA資金がシフトするため、金融機関にはメリットがある。しかし、金融リテラシーの低い高齢者にとっては、不合理な、つまり損失を被るかもしれない、商品の選択に誘導されるリスクもあることに注意が必要だ。