相性のいい「シニア人材と生成AI」がDXを後押し
高年齢者雇用安定法の改正に伴う経過措置期間が2025年3月で終了した。同年4月以降、企業は希望する従業員全員を対象に、65歳までの雇用機会を確保することを義務付けられた。
(中略)
業務に対する理解が浅い担当者が、通り一遍の業務情報を生成AIに渡すだけでシステム要件を検討するには、限界がある。業務要件の言語化や問題構造が整理できるシニア人材と生成AIは「相性がいい」。両者がセットになることで可能性が広がる。
(日経クロステック 4月4日)
生成AIが人間と同じような能力を発揮するには、人間同様、教育が必要だ。教育には教材となる学習データがいる。業務プロセスをAIに任せる場合、その要件を学習データとしなければならない。そのとき、経験豊富なシニアの方が、若い担当者よりも、より深い知識を学習データとして与えることができる。
ただ、シニアであっても知っているすべての事について「業務要件の言語化や問題構造が整理できる」わけではないことに留意が必要だ。かつて、筆者が富士通でAIの研究開発をしていた頃、委託研究先であった英国の大学の教授がknowhowとsayhowは違うと言ったことがあった。人は頭で知っているノウハウのすべてを言葉で表現できるわけではない、という意味だ。今年亡くなられた一橋大学の野中郁次郎名誉教授は同様のことを暗黙知と言っている。暗黙知をAIが学習するには、先人が書き残したドキュメントを読むだけでは難しい。シニアが業務に参加し、その働きぶりをAIに見せることによって、はじめて、シニアの暗黙知を学習することができる。シニアが長く働き続ける意義のひとつがここにある。