広い家は高齢世帯が5割所有、45歳未満は1割に低下

日本の住宅が狭くなるなか、広い家を所有するのは高齢世帯に偏る実態が明らかになった。5年に1回の総務省の調査によると、複数人数で快適に住めるとされる70平方メートル以上の住宅の年代別の所有率で65歳以上世帯が51%を占め、15年前と比べ14ポイントも上昇した。一方で新築住宅は狭くなっており、45歳未満で同じ面積を所有する世帯は12%に低下した。若い世代は十分な面積の家を手に入れにくくなっている。
(中略)
高齢世帯の持ち家の流通が本格化すれば、若い世代も広い家を確保できる機会は広がる。
(日本経済新聞 3月11日)

高齢者は広い家に住み続けている一方、若い世代は狭い家にしか住めなくなっているので、高齢者は広い持ち家を若い世代に売るように政策で誘導すべきだ、というのが、この記事の主張のようだ。しかし、この主張は、一見、客観的な事実に基づいているようで、実は、論理が飛躍しており、合理的ではない。

まず、「広い家を所有するのは高齢世帯に偏る実態を明らか」にしたのは、総務省統計局の住宅・土地統計調査だが、これは全国を対象としている。地価が高騰している東京23区だけでなく、高齢化が進む過疎地も対象だ。過疎地域では地価が安く、宅地も床面積も広く、かつ、人口は高齢者の割合が大きい。逆に、東京を始めとする大都市では、地価が高いため狭い家が多いが、人口は若い世代の割合が地方に比べて大きい。つまり、年齢に関係なく、過疎地域では広い家に住み、大都市では狭い家に住んでいるが、過疎地域では高齢者が比較的多く、大都市では若い世代が比較的多いため、全国を対象に統計を取ると、「広い家を所有するのは高齢世帯」で「若い世代は十分な面積の家を手に入れにくくなっている」と見えるだけだ。

したがって、高齢者が広い家を出て行っても若い世代が広い家に住むことはない。過疎地域では、若い世代がいないので空き家になる。逆に、大都市では、地価が高いので、一戸建ての場合は広い宅地を3分割して3棟の狭小住宅が建てられて若い世代が狭い家に住むことになり、広いマンションは中古価格が高くて若い世代は買えない。むしろ、国の政策で重要なのは、若い世代でも広い家に住めるよう、大都市圏の地価や建築費の高騰を抑えることだ。