年金の給付減に目配り、厚労省が3つの改革案
厚生労働省は25日、年金制度を巡る3つの改革案を示した。厚生年金の積立金を使い、将来の支給額の目減りが見込まれる基礎年金を3割底上げする案や、働くシニアの年金減額を和らげる方策を盛り込んだ。給付水準の低下への対応に主眼を置いた。保険料算出の基準となる「標準報酬月額」の上限引き上げ案も示した。
(中略)
財政が比較的良い厚生年金は抑制措置が近く終わる。そこで厚労省は厚生年金の抑制期間を延ばして、浮いた財源を基礎年金に回す方針だ。基礎年金の抑制を36年度で終わらせることで、実質目減りは1割にとどまる。現行制度の見通しからは3割の底上げになる。
(日本経済新聞 11月26日)
年金制度を巡る3つの改革案とは、基礎年金の3割底上げ、在職老齢年金制度における減額対象の基準額の引き上げ、標準報酬月額の上限引き上げの3つだ。どれも必要な施策ではあるが、新たな財源も必要となる。財源を考える上で、守るべきは受益者負担の原則だ。使いやすいという理由で、別の財布から流用するようなことは厳に慎むべきだ。
たとえば、厚生年金の資金を基礎年金に回して基礎年金の底上げを図るのは、厚生年金の加入者にだけ負担を強いる不公平な政策だ。この記事では、「基礎年金の底上げで、厚生年金受給者の99.9%は受給額全体が増える」と主張して、厚生年金の負担を正当化している。しかし、国民年金の加入者は、新たな負担なしに受給額が増える。つまり、厚生年金の加入者は、厚生年金以外の年金の加入者の増額分まで負担することになる。厚生年金に余裕があるのなら、それは、基礎年金ではなく、厚生年金の増額に充てられるべきであり、国民年金の財政が逼迫しているのなら、国民年金の掛け金を増額すべきだ。