働くシニアの年金減緩和、厚労省案

厚生労働省は一定の収入がある高齢者の厚生年金を減らす在職老齢年金の制度を見直し、減額の対象者を縮小する調整に入った。高齢者の手取りを増やすと同時に、働き控えを是正して人手不足対策につなげる。年金財政を安定させるため、厚労省はあわせて高所得の会社員の保険料負担を引き上げる案も検討する。
(中略)
在職老齢年金制度は賃金と厚生年金の合計額が月50万円を超えると、厚生年金が減額または支給ゼロになる仕組みだ。基準額が47万円だった2022年度の対象者は65歳以上で50万人に上り、働く年金受給権者の16%にあたる。
(日本経済新聞 11月20日)

年金を支払った保険料に対する報酬だとすると、収入によって年金が減額される在職老齢年金制度は不合理だ。「同じ保険料を支払ったにも関わらず、受給可能年齢になったときの収入によって、受給額に差が出るのはおかしい。保険料が同じなら受給額も同じになるべきだ。」ということになる。この考えに基づけば、在職老齢年金制度の存在が不合理なのだから、減額対象者の縮小ではなく、在職老齢年金の廃止が正しい。

一方、年金とは、現役世代が保険料を出し合って、収入が少なくなった高齢者を支えるものだとすると、保険料は所得税のように支払能力に応じて支払い、高齢者が困窮の度合いに応じて受給することに合理性が生まれる。

どちらにも一理ありそうだが、現行の厚生年金が、保険料が高ければ受給額も高いという仕組みを取っている以上、年金受給は保険料支払の対価と受け取られるのは致し方ない。この場合、在職老齢年金制度は速やかに廃止し、財源は標準報酬月額の18.3%とされている厚生年金の労使の負担割合を増額することで賄う、というのが本筋となる。