2024年の早期退職募集、1万人目前
2024年の上場企業の早期・希望退職の募集人数が11月中旬時点で約1万人に迫る水準となったことが分かった。23年の年間と比べて約3倍の水準で、直近では新型コロナウイルス禍の影響を受けた21年の年間に次ぐ勢いで推移している。
(日本経済新聞 11月19日)
大企業がリストラを急いでいる。賃金を大幅に上げていることもあり、人件費の抑制には、不採算事業からの撤退や間接部門の合理化が欠かせない。日本経済が高成長を続けていた時代には、余剰人員を成長部門に異動させることもできたが、今や、日本企業の成長は海外事業からもたらされており、国内の異動先は限られる。仮に、国内に人手不足の部門があったとしても、高齢の社員を配置転換するより、若い人を中途採用した方が費用対効果が高い。
今年は、特に、電気機器や情報通信で早期・希望退職の募集が相次いでいる。AIの普及によって、これらの業界の産業構造が大きく変化しており、株主からの資本効率向上圧力も強まる中、短期的に利益の見込めない事業の継続は難しい。こうしたリストラには、一定の合理性がある。
ただ、リストラで得た経営資源が成長分野の投資に回らなければ、企業は、縮小均衡に陥り、さらなるリストラを繰り返してじり貧となる。米国の大手AT企業もパンデミック後に大規模な人員削減を行ったが、同時に、AI関連事業に集中投資をし、高度成長を続けている。日本企業もリストラによる短期的なコストダウンだけでなく、成長分野への積極的な投資によって、長期的に利益も雇用も創出し続ける会社を目指すべきだ。