働く高齢者に安全な作業環境を、厚労省が努力義務に
働く高齢者の増加で労働災害も増えているとして、厚生労働省は高齢者に配慮した作業環境の整備を企業の努力義務とする。6日の労働政策審議会の分科会で、労使が大筋で合意した。厚労省は2025年の通常国会に労働安全衛生法の改正案を提出する方針。
努力義務とする対策としては、段差の解消や手すりの設置のほか、高齢者の体力や特性に配慮した作業内容の見直しなどを想定している。定期的な健康診断や体力チェックの継続的な実施も求める。同法に基づく指針も定める方針だ。
(朝日新聞 11月7日)
労働安全衛生法で高齢者に配慮した作業環境の整備を企業の努力義務とすることは、高齢者の労働災害を抑制する上で意味がある。義務ではなく努力義務であったとしても、企業が何をすべきかを法やそれに基づく指針で具体的に示すことで、企業に安全対策の実施を促すことができる。現在、対策として想定されている「段差の解消」や「手摺りの設置」は、労働災害に至る事故の削減に役立つだろう。
ただ、高齢になると体力だけでなく、認知機能も低下することに留意が必要だ。たとえば、ブレーキとアクセルの踏み間違いによる交通事故は、スロープや手摺りなどの物理的な対策だけでは防げない。同様の事故は職場でも起こりうる。職場での安全確保には、認知機能のチェックや認知機能が低下しても間違いを起こさないような作業環境の整備など、脳の衰えに対する対策も必要となる。