不動産大手、リッチシニアに的
首都圏で大手不動産デベロッパーが相次ぎ、シニア世代の富裕層向け住居施設を開業している。高級感のある内装に加え、健康や消費への意欲が高い「アクティブシニア」に照準を合わせ、ジムや図書室など設備や体験づくりにこだわる。不動産業界にとって逆境といえる人口減少時代に、成長するシニア市場での覇権争いが激化する。
(日本経済新聞 9月11日)
高齢の富裕層に向けたビジネスが様々な業界で拡大している。銀行や証券会社は富裕層向けの営業を増員して優良顧客の囲い込みを始めた。百貨店でもかつての中流ファミリー層の顧客が減り、外国人観光客と国内富裕層が顧客の中心になった。不動産業界も例外ではない。
新型コロナウイルスの経済対策として世界的に金融緩和が進んだことを背景に株などの金融資産が増加し、その後の欧米の金融引き締め局面でも円安などで金融資産の増大が続いて、富裕層を豊かにした。さらに、首都圏では、海外からの不動産投資も加わって東京都心の地価が高騰し、不動産を所有する高齢者の資産の含み益が増えている。これらの富裕層のシニアが、子育てを終えて不動産を買い換える場合、高くても設備や付帯サービスの整った物件を求めるのは自然だ。不動産業者がこれらのニーズに応えることは、業者の利益になるだけでなく、富裕層が蓄積してきた富を消費に変え、経済に循環させるという意味で経済全体の成長に資する。富裕層以外の層も含めた社会全体への波及効果も期待できるだろう。