60~64歳の就農者急減、労働力を分かち合おう

60~64歳の新規就農者が急減している。専門家からは、企業の雇用延長の影響が本格化しているとの指摘がある。人口減が進み、働き手をどう確保するかは社会全体の課題だ。市役所やJA、企業で働き続けながら、副業で農業をするなど、労働力を分かち合う仕組みを広げるべきだ。
 農水省がまとめた2022年の新規就農者数は、4万5840人と前年比12%減となり、統計のある06年以降最少となった。同省は、新型コロナ禍から経済が回復し、他産業に人材が流れたことが要因とみる。年代別でみると、減少が著しいのが60~64歳。組織や企業などを定年退職後、実家の農業を引き継いできた年代だ。22年は6750人と、前年より3010人(31%)減と大きく落ち込んだ。10年前と比べて約4割の水準だ。20代から50代の新規就農者はそれぞれ5000人前後だけに、60~64歳の大幅減が生産現場に与える影響は大きい。
(日本農業新聞 10月5日)

企業が定年退職後の再雇用の待遇を改善したり、定年を延長したりすると、60歳で仕事を辞めて農家を営む実家にUターンする人は減少する。農家は後継者を失って、農地が耕作されないまま放置されるケースが増えてきた。農業を主たる産業とする地域では社会問題であり、農業という産業としても存続の危機に関わる問題だ。

一つの解は、この記事も指摘しているように、副業としての農業を推進することだ。他の産業と人材を分かち合うことができれば、地方の農家もある程度の労働力を確保することができる。そもそも、日本では専業農家よりも兼業農家の方が多い。副業としての農業は受け入れられやすい風土がある。

さらに、農業へのシニアの参入を促すには、農業を農家という家業で行うのではなく、より大きな組織で営むことが重要だ。法人であれば、農作業を小さなタスクに分解して、シニアの副業向けのタスクを切り出すことも容易になる。その中には、リモートワークでも可能が仕事もあるだろう。都市部の企業に勤めながら、リモートワークで地方の農業に参加することも不可能ではなくなる。