60代社員を現役並み処遇、住友化学は給与倍増

人手不足が深刻になる中、シニア人材の処遇を現役並みに改善する動きが出てきた。住友化学は2024年から60歳以上の社員の給与を倍増。村田製作所も24年4月以降、59歳以前の賃金体系を維持しながら定年を65歳に引き上げる。「人生100年時代」を迎え、労働市場で比重が高まる60代以上が意欲を持って働くシニア雇用の環境づくりが欠かせない。
(日本経済新聞 7月16日)

「60歳以上の社員の給与を倍増」ということは、今まで60歳以上になると大きく下がっていたということでもある。住友化学の場合、60歳以上の再雇用者の給与は、それまでの4~5割程度だったという。若い人材を十分に採用できる環境にあれば、シニアの雇用は、企業利益の追求というより、従業員への福祉という意味合いが強い。したがって、給与を下げても雇用機会を提供することに意味があった。しかし、若年層の確保が難しく、人材不足の状況に陥ると、シニアの雇用維持は企業にとっても死活問題だ。住友化学のように、定年を延長するなどして、シニアの待遇を現役並みにする企業は増えるだろう。

ただ、企業の労働分配率はそれほど大きく変化しない。つまり、人件費の総額はあまり変わらない中で、シニアの待遇が改善されれば、他の世代の給与水準は相対的に低くなる。たとえば、大企業では、比較的給与が高いとされてきた50代の処遇は厳しくなるかもしれない。こうした変化が続けば、年齢による給与の差は小さくなって年功序列は崩れ、代わって能力と成果によって処遇が決まる人事制度が日本企業の標準となるだろう。