定年後、フリーランスで働く、保障は手薄、貯蓄まず確保

「一番大事なのは働きがい」。こう話すのはフリーランスの人事コンサルタント、三輪洋介さん(71)。現役時代に外資系生命保険会社で人事担当をしていた経験を生かし、中小企業の人事支援を中心に活動している。月収は30万円弱と現役時代の水準に遠く及ばない。それでも「働くことを通して社会に貢献しているという実感は大きい」という。
(中略)
ネット調査モニターに登録している全国の60歳以上のフリーランスと正規雇用者に年収を聞いたところ、フリーランスの年収は「100万円未満」が最も多かった。「100万~200万」も含めると全体の49%を占める。一方、正規雇用者では「300万~400万」が21%で最も多くなり、「200万~300万」が20%で続く。
(日本経済新聞 6月24日)

一般的に言って、フリーランスで働くことは、働き方の裁量は大きいものの経済的には厳しい。企業に所属する場合に比べて営業力に差がある。固定客を既に持っている人が独立してフリーランスになる場合は、最初から一定程度の収入を確保することができるが、ゼロから事業を立ち上げようとすると、持続可能な水準の収益を得るまでに、多くの困難に直面することになる。社会保険の負担も会社員に比べて重い。

結果、60歳で定年を迎えても独立せず、65歳までは再雇用で同じ企業に働き続け、65歳を超えてからフリーランスになるという選択をしがちだ。ただ、この場合、65歳から新たな仕事に取り組むことになり、事業の立ち上げはさらに厳しくなる可能性もある。できれば、副業として、65歳までにフリーランスとしての経験を積み、営業チャネルの開拓をしておきたいところだ。

企業としても、副業を積極的に認め、シニア従業員の柔軟な働き方を実現することは、メリットがある。たとえば、企業の仕事とフリーランスの仕事を両立できる人事制度が確立していれば、フリーランスが主な仕事となった後でも企業の仕事を副業として継続することもできる。