極洋、2割の大幅賃上げ、人脈豊富なシニア生かす

2023年の春季労使交渉では大手企業を中心に高水準の賃上げが相次いだ。水産業の極洋は4月から社員の平均年収を670万円から800万円へと2割引き上げた。人事制度を刷新して役職定年を廃止するなど、55歳以上の待遇改善に重点を置いた。年功序列の要素が強い制度から、個人の業務成果に応じて昇給や昇格が決まる役割等級制度も導入した。
(日本経済新聞 5月18日

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大企業では賃上げが相次いだとはいえ、賃上げ率は3~4%程度の企業が多かった。その中で、極洋の2割引き上げは、増収増益傾向にあるとはいえ、かなり、思い切った待遇改善だ。また、55歳以上の待遇改善に重点を置いていることも特徴的と言える。大企業の多くは、中高年のリストラを進め、そこで確保した原資を初任給の引き上げなど、若手の待遇改善に振り向けている。

極洋の人事戦略は、一見、他の企業とは異なる方向へ向かっているようにも見える。ただ、極洋が今回解決しようとしたのは、役職定年となる55歳以上で給与が極端に減少するという問題だ。55歳以上の待遇を改善し、55歳未満では年功序列の要素を減らすことで、55歳前後での給与のギャップを縮小させることができる。この問題は多くの大企業で共通しているだけに、他の企業の参考にもなるだろう。