高齢労働者の労災が増加傾向、厚労省が対策強化へ

労働者が仕事や通勤が原因で、負傷し病気に罹患する労働災害。
(中略)
高齢労働者の増加を見据え、来月4月から、第14次労働災害防止計画がスタートします。この計画の中では、高齢労働者の労災防止対策について、次のような記載があります。
○事業者が取り組むこと
・「エイジフレンドリーガイドライン」に基づき、高年齢労働者の就労状況等を踏まえた安全衛生管理体制の確立を進める。
・転倒災害が、対策を講ずべきリスクであることを認識し、その取組を進める。
・健康診断情報の電磁的な保存・管理や保険者へのデータ提供を行い、プライバシー等に配慮しつつ、保険者と連携して、年齢を問わず、労働者の疾病予防、健康づくり等のコラボヘルスに取り組む。
(企業法務ナビ 3月27日)

高齢労働者の増加に伴い、高齢者の労災件数が増加している。高齢者の労災発生率は高いため、高齢労働者の増加は労働者全体の労災発生率を押し上げる効果を持つ。この記事でも指摘されているが、令和3年の労働者全体に占める60歳以上の労働者の割合は18.2%であるのに対して、休業4日以上の死傷者数に占める60歳以上の労働者の割合は25.7%とかなり高い。高齢者に対する労災対策の強化は喫緊の課題だ。

厚生労働省は、令和2年3月にエイジフレンドリーガイドラインを策定し、労働災害防止計画でこれに基づく安全衛生管理体制の確立を事業者に求めている。中小企業に対しては、補助金や専門職員による現場確認とアドバイスの無償提供など、エイジフレンドリーガイドラインの普及に努めているが、令和3年度も高齢労働者の労災は増加しており、効果は限定的だ。より即効性を求めるなら、消防設備点検のように、点検と対策を法的に義務付けることも必要になる。一方で、労災発生の原因として多い転倒を防ぐためには、行政は、防滑床材やパワーアシストスーツのような設備や装置の低価格化のための技術革新を積極的に支援すべきだ。