フランス大統領、年金改革譲らず

フランスのマクロン大統領は22日、国内で強い抗議を招いている政府の年金制度改革の法案に関し「年内に施行する必要がある」として必要な自身の署名を違憲審査の完了後に行う考えを明言、改革実行へ譲らない姿勢を示した。
(中略)
年金支給開始年齢を62歳から64歳へ段階的に引き上げることを柱とする改革を政府は16日に国民議会(下院)で強制採択した。これに伴う内閣不信任決議案は否決されたが僅差となり、マクロン氏の支持率も低下している。
(共同通信 3月23日)

日本より出生率が高く、少子化を克服した印象もあるフランスだが、少子高齢化は着実に進んでいる。そのため、他の先進国と同様、年金支給開始年齢の引き上げなどの改革を行わない限り、年金制度の持続は難しい。しかし、年金支給年齢引き上げは国民に不人気な政策だ。今期限りで辞めるマクロン大統領は、今の世論に媚びることよりも、偉大な大統領として歴史に名を残すことを選択して、不人気覚悟で法案を強行採決したが、野党が争点として政治問題化したこともあり、反対運動はさらに過激になってきた。一部ではデモ参加者が放火するなど暴動になっている。

日本では、年金改革を巡って、これほど過激な反対運動は起きない。年金支給年齢の引き上げはやむを得ないという合理的な判断からか、あるいは、諦観からか、フランスのようにデモや政権支持率の低下は見られない。ただ、たとえば、国民年金保険料の未納のような形で、国民の年金制度への不信感が表面化することはある。国民年金保険料の現年度納付率は10年連続で上昇しているものの令和3年度で73.9%、未納者に支払を催促した後の最終納付率(令和元年度分保険料)は9年連続上昇でも78.0%に留まる。納付率の飛躍的な向上は、催促や差し押さえの強化だけでは望めない。フランスと同様、年金制度への信頼回復が必要だ。