英経済にコロナ余波、早期退職増で減る労働人口

50代のウッドブリッジさん夫妻はコロナ禍中、人生には仕事よりも大切なことがあると心に決め、ストレスの多い仕事をきっぱりと辞めた。英国ではこうした早期退職者が増え、インフレによる生活費の高騰にもかかわらず、労働人口縮小を案じる政府の復職呼びかけを拒否している。
(ロイター 3月12日)

米国では、コロナ禍で離職した高齢者がポスト・コロナになっても労働市場に復帰せず、労働市場逼迫の要因のひとつとなっているが、同様の現象は欧州でも見られる。特に、英国は、EUから離脱した影響で外国人労働者が流入しにくくなり、もともと労働力の不足は深刻だった。加えて、この記事によれば、「55─64歳の就業率は、先進国中で英国が最も大幅に低下」した。

欧米で高齢者の労働参加率が回復しない要因のひとつとして、新型コロナ対策のロックダウン中に、個人に対して多額の給付金を支給したことが挙げられる。個人ではなく、企業に対して給付金を配った日本政府の施策とは対照的だ。この新型コロナ給付金は、近々退職する予定だった高齢者にとって、退職金をもらうのと同様の効果がある。その結果、割り増しの退職金を受け取って早期退職する日本の会社員と同じ状況となった。パンデミックによって膨らんだ家計の資産がインフレによって相殺されて元に戻るまでは、高齢者の就労意欲は回復しそうにない。英国を始めとする欧米の労働力不足は、しばらく続きそうだ。