生涯働くのが幸せ、シンガポール

首相のリー・シェンロン(65)は14年末、フェイスブックで「日本で高齢者福祉が社会の負担になり、若者が不満を持っている」という記事を紹介し、「これは教訓だ。我が国は日本のような事態にならないようにしなければならない」と国民にはっぱをかけた。
「高齢者は負担ではなく、財産になり得る。高齢化の波を『シルバー・ツナミ』ではなくて『シルバーの恩恵』ととらえるべきだ」(エイミー・コー保健省上級相)との理念のもと、元気な高齢者を「楽齢(アクティブ・エイジャー)」と名付け、就労や社会貢献を奨励。60歳を「NEW 40(新しい40歳)」と呼ぶなど「エイジレス(年を取らない)」社会を打ち出す。06年に14%だった65歳以上の就労率は16年には27%と倍増。日本の22%を追い抜いた。
(The Asahi Shimbun GLOBE 2018年1月7日)

シンガポールの出生率は1.2と日本の1.44よりも低い。日本よりも早いスピードで高齢化が進行している。日本と同様、天然資源に乏しく、人材が最大の資源であるシンガポールにとって、迫り来る少子高齢化は今そこにある脅威だ。日本以上に高齢者の就労率の向上に向けて努力を傾注するのもうなずける。

シンガポールが特に努力しているのは、高齢者自身がいつまでも働きたいという意欲を持ち続けるようにすることだ。生活を維持するために仕方なく就労するのではなく、社会に貢献し、生きがいを体感し続けるために仕事を続ける、多くの高齢者がそうした気持ちを抱くことのできる社会が理想の高齢化社会だ。

日本もシンガポールも、理想と現実の間には、まだギャップがあるが、そのギャップを埋める努力は成果を上げつつある。ともに互いを教師として、エイジレス社会の実現へ向けて、さらに努力を重ねるべきだ。