シニアITエンジニアのキャリア・働き方―50代、60代での市場価値を高めるために―

シニア×ITエンジニア

近年、働き方の多様化が進みフリーランスで仕事をする人が増えています。翻訳、広告制作、写真、音楽講師、記事執筆など職業は様々ですが、エンジニアもそのひとつです。特にITエンジニアは、専門性が求められる一方で分業しやすい仕事であり、フリーランスに向いているとも言えます。

ITエンジニアとしての市場価値を高めるキャリアフロー

ITエンジニアは、一般に、簡単なプログラミングから始め、より上流の設計、より大規模なシステムの設計、データベースやERPなど大規模なデータを扱う複雑なシステムの設計と経験を積みながら成長し、システム全体のアーキテクチャを設計するアーキテクトやプロジェクト全体の管理を行うプロジェクトマネージャーになります。

標準的なITベンダーでは、アーキテクトやプロジェクトマネージャーになるのは35歳前後です。ただ、大規模システムの元請を担う大手ITベンダーでは、入社以来一度もプログラムを書いたことがなく、開発はすべて外注してきたというシステムエンジニアも少なくありません。元請企業にとって外注管理の能力は最も重要なスキルではありますが、開発の現場を知らずして有能なアーキテクトやプロジェクトマネージャーにはなれません。大手ベンダーといえども、キャリア・パスの中にプログラミングや設計を経験する機会を入れておくべきでしょう。

逆に、プログラミングから上流設計に至る一連の開発作業を経験してきたITエンジニアは、企業を離れてフリーランスとして独立しても仕事をこなすことができます。収入は、数年の開発経験があれば、年収500万円前後、データベースやERPなど特別なスキルがあり、コミュニケーション能力やマネジメント能力があれば、年収600 ~ 1000万円というところです。データベースのOracleやERPのSAPなど業界でよく使用されるソフトの上級資格を持っていれば、さらに高給も期待できます。

シニアITエンジニアのフリーランスとしての働き方

フリーランスとして働くメリットのひとつは、年齢に関係なく自分に合った働き方ができることです。IT業界では計画よりも開発作業が遅れるのが常です。企業の中では、納期厳守のため深夜まで仕事をすることは珍しくありません。しかし、フリーランスでは、契約時に作業の範囲と報酬を明確に決め、責任の範囲を限定しておくことができます。60歳を過ぎても能力があれば自分にできる範囲で仕事をすることが可能です。その意味では、フリーランスのITエンジニアというのは、シニアの働き方の選択肢のひとつと言えます。

ただ、フリーランスのITエンジニアとして仕事を続けるのは、大変な面もあります。そのひとつはスキルレベルの維持です。IT技術は日進月歩であり、上述のOracleやSAPも機能向上を繰り返していますから、資格を保有していてもそれを継続的に更新していかなくてはなりません。

また、フリーランスに頼める仕事というのは、発注側からすると誰にでも頼める仕事であったりします。その場合、競争相手が多くなります。シニアにとって若いエンジニアと競争するのは厳しい案件もあるでしょう。さらに、競争相手は国内にとどまりません。近年、大手ITベンダーはインド、中国、ベトナムなどグローバルに開発拠点を展開しています。これらの新興国の安い労働力とも競争しなければなりません。

ITの能力以外にも市場価値を高めるために必要な能力とは

これらの競争環境の中で、シニアITエンジニアが安定して報酬の高い仕事をしていくには、付加価値を高めることが重要です。

特に、自分にしか提供できない価値を持てば、単に不足人員を補填する仕事ではなく、その価値を必要とする仕事を得ることができます。

また、コミュニケーション能力を磨くことも重要です。大規模システムの開発が失敗する原因のひとつは利用部門とのコミュニケーションの不足によるものです。長い経験に裏打ちされた高いコミュニケーション能力を発揮することができれば、プロジェクトにとってなくてはならない存在となります。

シニアITエンジニアの皆さんには、シニアとしての強みを活かし、独自の価値を提供して、社会から必要とされるエンジニアであり続けていただきたいと思います。