少子高齢化で拡大する市場、縮小する市場

少子高齢化での市場とは

少子高齢化が進むことで、規模の拡大が期待される市場と、逆に縮小が懸念される市場があります。たとえば、高齢化によって医療や介護の市場は拡大を続けていますし、少子化によって教育や玩具の市場は縮小しています。

年代別、拡大する市場とは

総務省統計局の平成25年の家計調査によれば、二人以上の世帯について世帯主の年齢階級別に以下のような暮らしの特徴があることがわかります。

  • 30歳未満で多い住居費
  • 30歳代で多い幼児関連費
  • 40歳代及び50歳代で多い教育関係費
  • 60歳代で多いゴルフプレー料金
  • 70歳以上で多い健康保持用摂取品の支出

これらは今の暮らしの特徴ですが、同時に、今後、拡大する市場と縮小する市場を示唆しています。

30歳未満で多い住居費

30歳未満の住居費は年間50万円弱で、その内96.7%が家賃地代の支払いです。これが40歳代以上になると住居費は年間20万円程度となり、その中での家賃地代の割合は減少し、設備修繕・維持への支出の割合が多くなります。これは、世帯主の年齢が低いほど借家の比率が高く、年齢が高くなると持家の比率が高いことを示唆しています。

したがって、少子高齢化が進めば、若年層向けの借家市場は縮小へ向かい、代わって期待されるのはリフォーム市場ということになります。

30歳代で多い幼児関連費

晩婚化が進み、今や幼児関連費が最も多いのは30歳代となっています。30歳代の幼児関連費は年間186,957円、30歳未満は157,187円です。その内訳で最も多いのは幼稚園・保育所費用で、6割を超えています。

少子化により幼児の数が減れば、幼稚園・保育所市場は縮小することが予想されますが、幼稚園と保育所では事情が異なります。共働き世帯の増加によって、保育所の需要はむしろ大きくなっています。需要が減少する幼稚園と増大する保育所の関係をどうするかは長らく政治問題となっていますが、幼稚園が蓄積してきたリソースを活用して多様な保育サービスを提供することは社会的な課題でもあります。

40歳代及び50歳代で多い教育関係費

40歳代や50歳代では子供が学校に通うようになり、授業料,学習参考書,仕送り金,塾の費用などの教育関係費が多くなります。40歳代で年間476,374円、50歳代で495,922円です。ともにその半分は授業料、教科書・学習参考教材ですが、40歳代では補習教育費、50歳代では国内遊学仕送り金が多くなっています。これは、40歳代では子供が高校生以下の場合が多くて塾や家庭教師に費用がかかり、50歳代では子供が大学生の場合が多くて親元を離れて暮らすケースが増えることによるものです。

これらの教育関係市場は少子化によって縮小が見込まれますが、いわゆる難関校と言われる偏差値の高い大学とそれを目指す進学塾の市場は、時代を超えて一定の需要があります。一方で、既に定員割れを起こしている私立大学では、社会人教育や留学生の受け入れなど、新たな需要を開拓しない限り、大学経営は厳しさを増します。

60歳代で多いゴルフプレー料金

ゴルフのプレー料金への支出は60歳代が最も多くなっています。年間1.8万円ほどで最も少ない30歳未満の8倍です。次に多いのが70歳以上、その次が50歳代です。ゴルフ場の会員権を購入したのは若いときだったのかもしれませんが、実際によくプレーするのは時間的な余裕ができる50歳以降だということのようです。

高齢化が進めば、ゴルフのような高齢者でもできるスポーツ市場は全体として拡大することが期待できます。しかし、ゴルフ人口が増えるかどうかは定かではありません。ゴルフをプレーしない若年層は、高齢になってもやはりゴルフはぜず、他のスポーツをするかもしれないからです。趣味趣向は年齢ではなく、世代に依存する傾向があります。

70歳以上で多い健康保持用摂取品の支出

サプリメントなどの健康保持用摂取品の支出金額は年齢が高くなるほど多くなり、70歳以上が最も多く、30歳未満の10倍になっています。美容と健康のために飲むとされるサプリメントですが、美容よりも健康の方が切実な需要を持っているのかもしれません。

だとすれば、サプリメントは今後有望な市場と言えます。アンチエージング向けサプリメントの開発に多くの企業がしのぎを削っているのも頷けます。

このように、少子高齢化によってさまざまな市場に影響が及ぶことが予想されます。少子高齢化先進国の日本がこのニーズの変化を捉え、それに合った製品やサービスをいち早く開発し、提供することができれば、日本の将来もそれほど暗いものではないのではないでしょうか。