人手不足で期待される外国人とシニア-労働人口の減少-

人手不足で期待される外国人とシニア

景気回復に伴って、様々な業界で人手不足が深刻になってきています。

日本経済新聞が実施した「社長100人アンケート」では、人手不足を感じている経営者は27.1%に上っています。このうち、38.5%は事業に影響が出ていると回答していますから、全体では、27.1 × 38.5 = 10.4%の経営者が人手不足で事業に影響が出ていると認識していることになります。社会的にも無視できない数字になってきました。

人手不足が顕著な建設業と流通業

とりわけ、建設業や流通業での人手不足は深刻です。建設業では現場作業員を確保できず受注を見送るケースもでてきました。流通業でも外食業、運輸業などで事業の縮小に追い込まれている企業が増えています。日本経済新聞が6月に小売・外食の上場企業を対象に行った調査では、パート・アルバイトの「不足感がある」と回答した企業は67%に達しました。

牛丼チェーンの「すき家」では、アルバイト店員の不足で2月以降、250店舗以上が一時休業や営業時間短縮に追い込まれました。(すき家の約250店が人手不足で営業休止)同様に、居酒屋チェーンの「和民」は14年度に全体の1割にあたる60店舗を閉鎖する予定です。運送業ではトラックの運転手が集まらず、トラックと仕事はあっても受注できないという事態も生じています。

人手不足の救世主になるのは…「外国人とシニア」

こうした人手不足の解消策として、今、期待されているのが外国人とシニアです。

外国人は、製造業や建設業では既になくてはならない労働力となっていますが、(人手不足対策に外国人労働者の雇用拡大論が浮上)流通業でもその存在が大きくなっています。特に、若い労働力を必要とする居酒屋などの外食業や素早い対応を求められる食品スーパーのレジ担当などで、外国人の採用が増加傾向にあります。たとえば、ローソンは、外国人留学生の受け入れ組織と連携して外国人の採用を拡大し、日本語の言葉づかいを指導するなど教育を充実して接客のできる店員に育てる他、日本語ができない外国人には弁当工場での仕事を用意するなど雇用機会の拡大にも動いています。

シニアについても期待が高まってきました。前述の「社長100人アンケート」では、人材確保策として、28.1%の経営者が「シニア人材の活用」を挙げています。これは、「中途採用の拡充」、「正社員採用の拡充」に次いで3番目に多い回答です。

ただ、シニアの場合には、労働時間とその職務内容について配慮が必要な場合もあります。「外国人は若い労働力の補完として期待できるが、日本語や習慣の壁がある。」、一方、「シニアは言葉や習慣には問題は少ないが、新しい環境への適応能力や肉体的な能力には限定的な面がある。」ということで、外国人とシニアを相互に補完させて人材確保を図っていくケースが今後は増えてくるのではないでしょうか。そのためには、シニアを活用しやすい職場環境の整備が必要です。

たとえば、外国人の採用に積極的なローソンは、高齢者には早朝の数時間だけおにぎりを仕込む人手が足りない店などを優先的に斡旋するなど、シニアの活用の場を広げる施策も始めました。(本部が店員確保に乗り出すコンビニ業界)吉野家でも、調理器具の改良やレイアウトの見直しによって作業効率を上げ、シニアでも働ける環境を整えようとしています。また、運送業では定年延長によってドライバーを確保する動きが広がっていますが、ここでも、勤務時間を短縮したり、長距離の輸送を避けたりといった配慮がなされることが多いようです。

労働人口減少による対応に迫られる日本社会

流通業における人手不足は、現在のところ、ブルーカラーのパートやアルバイトが担ってきた職場を中心に顕在化していますが、景気拡大が長期化すれば、ホワイトカラーの業務にも波及していくことでしょう。企業としてもそこでのシニアの活用のあり方を工夫する必要に迫られる時代が来るかもしれません。今いくつかの業界で起きている人手不足は、局所的、一時的なものではなく、今後、急速に労働人口が減少する日本社会の変化の前兆だと捉えるべきです。この事態を契機として、企業もシニア自身もそしていずれシニアになる若年層も、それぞれの能力を無理することなく社会に活かせる方法を工夫することが求められています。