空き家-日本独特の住宅流通市場-

日本独特の住宅流通市場

皆さんのお宅の周りに、長い間人が住んでいない空き家はありませんか?総務省の「住宅・土地統計調査」(平成25年)によると、日本全国の空き家は過去最高の約820万戸。全住宅数に占める割合が13.5%に達したそうです。

制度と国民性により空き家が増加傾向に!?

空き家が増える理由のひとつにあげられているのが、固定資産税の優遇措置です。

「土地にかかる固定資産税は住宅が建っていれば本来の6分の1に軽減されるが、取り壊すと優遇が薄れ、支払う税の額が約4倍に跳ね上がる。持ち主にとっては空き家のまま放っておいた方が合理的なため、取り壊そうとしない」(日本経済新聞 2014/7/29)

安くはない固定資産税の税額がいきなり4倍にもなるとしたら更地になどできないというのも理解できなくはありません。高度成長期の住宅不足の時代に農地などの宅地化のために導入した税制とのことですが、時代が移り変わり、住宅事情も変化する中で、何ら見直しがされずにここまで来たというのは、いかにも日本的な話といえそうです。

一方、家で生活をする私たちの側にも、新築を好む・重視するという傾向があることは否定できません。全国9万世帯を対象に5年に一度行われる「住宅総合調査」によると、今後住み替えるとした場合、「新築住宅が良い」とする人は半数を超えています(平成20年調査で51.5%)。

大きく異なる日本と海外の住宅流通市場

新築信仰の背景には、日本の住宅流通市場の特徴もあるようです。新築と既存住宅流通全体に占める既存住宅の割合は、平成20年で13.5%。世界に目を移すと、フランス64%、イギリス85.8%、アメリカはなんと90.3%に達しています。私の友人も、アメリカで築100年の家を買って住んでいたことがありますし、イタリアの知人は中世からの建物を自分たちで少しずつ手直しをしながら暮らしています。

中古住宅流通シェアの国際比較

日本の戸建て住宅は、築後20年で市場価値はほぼゼロになるそうです。そのため、資産価値評価が低い中古住宅としては流通せずに、上物を取り壊した更地や、新たに建てた家が流通市場に出回ることとなります。また、取り壊される住宅の平均寿命は27年。木造が多いことや、気候風土、地震の多さなど、日本特有の事情はたくさんあることと思いますが、アメリカの66.6年、イギリスの80.6年と比べると、住宅の寿命が非常に短いことがわかります。(以上、データは国土交通省 中古住宅の流通促進・活用に関する研究会資料より)

人々が新しい家を好むから2-30年で建て替えられていくのか、住宅業界の事情でどんどん家が建て替えられるから家は新しいものが良いという意識が刷り込まれてしまっているのか… 鶏と卵の話のようではありますが、人々の意識は変わりつつもあるようです。先にあげた「住宅総合調査」では「新築・中古にこだわらない」という割合が、平成15年調査では19%だったものが、平成20年調査では30.3%と10ポイント以上も増えているのです。最新の調査が昨年行われていますが、新築にこだわらない人の割合がどの程度の数字になったのかが、注目されます。

人口減少時代を迎え、必要な住宅数も当然ながら減少していきます。空き家が増えると、町全体が荒廃していきかねません。人々の意識が変化しつつある状況も踏まえた対策・対応が待たれます。